「−今日は母の日デス」 突然、セリオが奇妙なことを言い出した。 「何?」 ソファーに座ったまま首をめぐらし、声がしたほうに視線を向ける。 そこには、看護婦姿の二人が立っていた。 「お注射なのですぅ」 わたわたっ。 どこから持ってきたのか、マルチの手には注射器が。 「マルチ……注射はやめてくれ」 「だいじょぶですぅ、ちゃんと練習しましたからぁ」 ほう。 ……と、いつもならここでやらせてみるのだが。 ……注射器に、「芹香ラボ謹製」のラベルが貼ってあるのはちょっと……。 「……セリオ、頼むからそれは勘弁してくれ」 「−仕方ありませんネ」 ひょい、とマルチの手から注射器を奪い取るセリオ。 「あううっ、セリオさんひどいですぅ」 「そんなに注射が楽しみだったのか?」 「はいぃ〜」 やや俯き加減で、上目づかいに俺のほうを見ながら答えてくるマルチ。 その目尻に一滴の真珠を見つけて、俺、陥落。 「それなら、俺が注射してやるっ!」 「わきゃっ!?」 無防備に近づいてきたマルチの足をとって裏返し。 何故か無意味に短い白衣の裾が重力に負けて裏返る。 木綿の白いパンティが、白衣の薄いピンク色の裏地に映えて……。 うむ、よしっ! 「い、いくぞマルチっ!!」 「はわわっ、て、抵抗できないのですぅっ」 と、その時。 首筋に、冷たい金属の感触と、続いて何かが流れ込んでくるような感触。 「……セリオっ!?」 「−いけない浩之さんですネ」 しまった、不覚……。 その途端、世界がぐらぐらと揺れ始める。 まるで俺を中心にすべてが回っているような感覚にとらわれる。 さすが先輩の薬、効果は抜群だぜ……。 やがて目覚めると、さっき俺がマルチにさせていたのと同じ姿勢だった。 ただ、俺が、だが。 尻の下から、乾いた布の感触。 ……おしめだな、こりゃ……。 「セリオ、何のつもりだ?」 「−今日は『母の日』デス」 「ママと呼んでくださってよいのですぅ〜」 むう、まさに、なーすがまま。 <続かないのですぅ> <戻りますぅ>