あかりちゃんがんばる!

ToHeart:神岸あかり
「あかりちゃん、浩之ちゃんに想いを馳せる」







 浩之ちゃん、浩之ちゃん。
 どうしていつも、他の娘が傍にいるの?
 それも、不特定多数の娘が。

 浩之ちゃんに人気があるのは、私も嬉しいんだけどね。
 だけど……浩之ちゃんが他の娘と話しているのを見る度に、とっても寂しく
なって来ちゃうの……。






 浩之ちゃん、浩之ちゃん。
 どうしていつも、私にはぶっきらぼうなの?

 他の娘には優しく話しているのに。
 他の娘には笑顔を向けているのに。

 やっぱり、幼なじみだから?
 私じゃ、駄目なの?






 浩之ちゃん、浩之ちゃん。
 どうしていつも、私が困ってる時には助けてくれるの?

 放課後、夕立が降った日に。
 私が傘を忘れてきた時、何も言わずに傘に入れてくれたよね。

 いっそのこと、相手をしてくれなくてもいいのに。

 私、わがままだから。
 優しくされると、誤解しちゃうよ?






 浩之ちゃん、浩之ちゃん。
 私のこと、どう思ってるの?

 ただの幼馴染み?
 ただのクラスメート?
 それとも……?

 早くはっきりさせてよ、浩之ちゃん。

 時間が経てば経つだけ、想いが募るから。
 想いが募れば募るだけ、心が辛くなっちゃうから。






 だから浩之ちゃん、お願い。






 私の心を、あなたに捧げます。
 だから……あなたの心を、私に……。
















「ふぅ……」

 ことん。

 私は日記帳の上に、くま模様のペンを置き。
 最近はいつも、似たような内容ばかりなのが困っちゃう。
 そう、いつも同じ人のことだけ……。

 こんなの浩之ちゃんに見られたら、怒られちゃうかもね。
 それとも……鼻で笑われちゃうかな?

 自称・藤田浩之研究家だけど。
 浩之ちゃんの心の中まではわからないの。

 だって浩之ちゃんを前にすると、自分が自分でなくなるから。
 どきどきしちゃって、頭がまともに考えてくれないの。
 浩之ちゃんの前でだけ、そうなっちゃうの。

 でも、それが嬉しく思えるのって……変かな?

 浩之ちゃんのことを考えただけで、心が踊っちゃうの。
 浩之ちゃんの笑顔が浮かんだだけで、それだけで幸せになれるの。

 私、眠る前に必ず浩之ちゃんに『おやすみ』を言ってから寝てるんだよ。

 幸せな気持ちで眠れるように。
 もしかして、夢に出て来てくれないかな?

 ……なぁんてね。












「あ……」

 いっけない。
 日記を書きながら寝ちゃってた。
 あ、やだ……涎が垂れちゃってるよ。

 ごしごし……。

 こんなところ、浩之ちゃんには見せらんないよね。

 って……私、何で変なこと考えてるんだろ!?
 寝顔を見るってことは、つまり、その……よね。

 ぼんっ☆

 ああん、もう!
 ちょっと居眠りしただけなのに、どうして恥ずかしい思いしなきゃ駄目なの?

 それもこれも、浩之ちゃんが悪いんだからね?
 罰として、明日のお弁当には浩之ちゃんの苦手なもの入れちゃうんだから!
 ……でも、ちょっとだけだから安心してね。

 好き嫌いは駄目なんだからね。
 私のお弁当、全部食べてもらいます。
 覚悟していてね、浩之ちゃん♪






<続くんです>
<戻る>