あかりちゃんがんばる!

ToHeart:神岸あかり
「あかりちゃん、浩之ちゃんを眺めちゃう」







 ぴんぽーん、ぴんぽーん……。

「浩之ちゃ〜ん♪」

 朝も早くの6時半。
 起きて来ないことは知りつつも、一応インターホンを鳴らしてみる私。

「……寝てるよね、うん」

 かちゃり、と静かに鍵を開け。
 がちゃり、と静かに扉を開け。

 ……進入成功だよ、浩之ちゃん。

「えーっと……朝ご飯の用意しちゃおうっと」

 足音を立てないようにキッチンへ向かう私。
 ちょっとやそっとの物音じゃ浩之ちゃんは起きないと思うけど……一応、ね。






 ご飯とお味噌汁の準備はおっけー、目玉焼きは後で作ろうね。
 さてと、それじゃぁ……行こうかなっ。

 キッチンから居間へ抜け、2階に続く階段へ。
 忍び足なのに、きしきしと音がするよ……私、そんなに重いのかなぁ?

「浩之ちゃん……入るよぉ?」

 浩之ちゃんの部屋のドアの前に立ち、そっと一言。
 勿論、返事は返って来なかったけど。

 かちゃ……。

 カーテンの隙間から、朝の陽射し。
 もう見慣れてしまった、薄暗い部屋。
 でも……この胸のどきどきは、いつまで経っても慣れないね。

「えーっと……これでよし」

 浩之ちゃんの枕元、目覚まし時計のスイッチを切っちゃう私。
 ……ついでに、少し針を進めておいたりして。

 だって今日は、私が目覚まし時計の代わりだもん。

「浩之ちゃん、浩之ちゃん。朝だよー」

 ゆさゆさっ。

「んー……あかりかぁ?」

 うん。
 そうだよ、私だよ。

「も、もう10分……」

 浩之ちゃんは、目覚し時計をちらっと見て。
 お決まりの言葉に、私は軽く溜め息1つ。

「……しょうがないなぁ、浩之ちゃんは」

 ベッドの傍は枕元、床にぽふっと座り込む私。

「だらしない顔して……本当に、しょうがないんだから」

 浩之ちゃんの寝顔を眺めるには、ここが特等席だよ。
 本当はもっと傍で眺めたいけれど……今は、ここまででだね。

 でも、いつかは……ねっ?

「…………」

 すかーっ、すひょひょ〜……っ。

 あ……浩之ちゃん、また眠り込んじゃったね。

「んーと……」

 私は自分の腕時計を見て。
 時間はまだまだ、余裕たっぷり。

「ふふふ……」

 だから、浩之ちゃん。
 もう少しの間、眠っていても大丈夫だよ。

 だらしないけど、可愛い寝顔。
 もう少し眺めさせててね、浩之ちゃん♪






<続くんです>
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