へなマルチ外伝

へなちょこマルチものがたり AKT
その1「地域限定勇者王誕生!」

作者前書き
 この作品は、T.SUGIが、春日さんにお送りする為に書いた秋田県ネタ
満載の地域限定SSです。






 おががっ おががっ おががいがー!
 おががっ おががが おががいがー!!


 なんじゃい、その歌は?
 妙な歌と共に、部屋の中に入ってきたマルチの姿は……
 歌以上に変だった。


【オープニング 地域限定勇者王誕生!】

 おががっ おががっ おががいがー!
 おががっ おががが おががいがー!!

 怒れ! なまはげメイドロボ!
 赤いお面に ワラのみの
 光輝く鬼包丁 地域の希望守るため
 今こそ立ち上がれ
 ロボの心の幸せを 乱す敵は許せない

 おががっ おががっ おががいがー!
 おががっ おががが おががいがー!!

 ファイナルフュージョン承認だ!
 今だ! 超人合体だ!
 空間湾曲 出刃ぃでぃんぐ・どらいばー!
 奇跡! 神秘! 真実! 夢! 誕生!
 無敵の ドでかい守護神 地域の勇者王

 おっがっがっがっ おががいがー!!


 これは、秋田県人の方に贈る、地域限定の物語である。


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 |地域限定勇者王誕生!|
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 ワラ靴に、ワラの『みの』。
 右手に手桶、左手には出刃包丁。

 泣ぐ子はいねがーっ!

 ってなセリフが似合うくらい、『なまはげ』な格好。
 知らない人の為に説明するが、なまはげ、とは小正月に鬼の格好をした者が
家々を回り、怠け者、泣き虫な子供を脅して回るという秋田県男鹿(おが)地
方の年中行事である。

「えへへ〜っ、似合ってますか、浩之さん」

 ……似合うとか以前の問題だと思うんだが。
 ってか、その胸元に下げたでっかい鬼の面は止めろ。
 かぶってないだけマシだけどな。

「どうですか、浩之さん。マルチさんの凛々しいお姿。この『あるてぃめっと
・あーまー』をいーくいっぷすることによって、スピード、パワーが共に30
%アップ(来栖川比)するのです」

 ……犯人はお前か、セリオ。

「いえ、残念ながら」

 残念なんかい。

「実は、この度、来栖川が某地方局とタイアップして、お子さま向けヒーロー
番組を提供する企画が持ち上がったのです」

 何で地方局……

「タ○ラがコナ○に買収されてしまい、勇者シリーズの新作も『ときめき勇者
王』になりかねないこのご時世だからこそ、真のヒーローが必要なのです!」

 いや、それは俺も考えたがありえないぞ。
 勇者シリーズの版権は、製作元のサ○ライズが持ってったはずだ。
 ……って、そういうことじゃなくて。

「ちなみに、某地方局とは、AKT(秋田テレビ)のことです。今、時代は地
域限定ヒロイン」

 うわっ、狭っ!
 地域限定って言っても限度があるだろ。
 せめて○北電力のペンギン少女ぐらいの扱いはしてやれよ。

「これが、地域防衛組織の司令室、メインオーダールームです」

 セリオが差し出した写真に写っているのは、丘の上に建つ変わった形の建物。
 ……これ、男鹿の寒風山頂上にある展望台じゃん。

「地域密着型番組ですから……フロアー自体の回転により、全周の展望が可能
です」

 そりゃまぁ、360度の景色が楽しめる回転展望台だからな。

「ちなみに、回転制御機構を来栖川製のものに取り替えましたので、従来の
40倍速の回転が可能になりました」

 余計に回してどうする!

「基地本体は、こちらの水面下に建造されています」

 男鹿水族館……(汗)

「ポートタワー・セリオンの方にする案もあったのですが……」

 どうでもいいけど、ローカルすぎるぞ、これ。

「ちなみに、パイロットフィルムも作成済みです」

 この内容で?

「県庁所在地、秋田市を目指し、列車型に変形して秋田新幹線路上を爆走する
敵巨大ロボ! それを追うのは、列車型マシン『らいなぁおがー』に搭乗した
マルチさん!」

 らいなぁおがー……
 秋田新幹線の形してんのか?

「いえ、男鹿線です」

 JRローカルかい。
 ああっ、しかもJRの旧式車両!

「敵ロボに追いすがる『らいなぁおがー』でしたが、秋田新幹線路は、途中で
スイッチバックがかかります。結果、逆走する事に慌てるマルチさんを引き離
し、敵ロボは秋田市に侵入を果たしてしまいます」

 こんなどうでもいい所で、ローカルな小ネタはさむなよ。
『○○列車殺人事件シリーズ』じゃないんだし、こだわる所じゃないだろ。

「アトリオンビルを破壊しようとする敵ロボ! そこに遅れて到着したマルチ
さんがさっそうと立ちふさがります」

 だから、いちいちローカルな地名を出すなって。

「『すてるすおがー』『らいなぁおがー』『どりるおがー』の3つの『おがー
マシン』が合体することで、我々の待ち望んでいた真の勇者が誕生するのです
!! そう、『勇者王おががいがー』が!!!」

「『勇者王おががいがー』なのです〜」(ばーん!)

 ポーズを取るマルチ。
 ……突っ込みたい所は無数にあるけど、とりあえず危ないから包丁振り回す
な。
 お前の場合、台所で普通に使っていても危険がつきまとうんだから。

「大丈夫ですよ、浩之さん。これは、マルチさんのオプション、『空間湾曲ド
ライバー』の形を変えただけのものです」

 ああ、あれの?

「名付けて『出刃ぃでぃんぐ・どら……』」

 分かった、皆まで言うな。

「……イケズですネ。ちなみに右手の桶は……マルチさん?」

「はいですー」

 右手の手桶を高々と掲げるマルチ。
 すると、手桶が高速回転を始めた。
 おおお?

「ぶろうくん・OKE!」

 どっこーん! という轟音と共に、高速回転をしながら打ち出される手桶。
 当然部屋の壁にぶち当たるが、桶の勢いは止まらない!

「破壊率、20……35……50……どんどん上昇していきます!」

 ノリノリで実況解説するセリオ。
 てか、破壊率って俺の家の壁だぞ。

「粉砕です!」

 とうとう桶が壁を突き抜ける。
 あーあ、やっちまいやがった。

「それはさておき……」

 置くなよ!

「黄金金槌にも改良が加えられまして、運搬車両がロボに、そして更に分離変
形して金槌とグローブに変形するのです。名付けて『ごるでぃ・か○ーら』!!」

 はぁ? 金色の○ローラってもしかして……

「はい、トヨ○カロー○秋田もスポンサーになってますから」

 秋田限定仕様車、金色の『なまはげ・カ○ーラ』なんて、秋田県人じゃなき
ゃ知らないって!






<おしまい>
 これが勝利の鍵だ!

「AKITA STYLE 秋田の基礎知識」
http://www.d1.dion.ne.jp/%7Ehatosan/akita/
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